[キム・サンチョルのコラム] もう「見知らぬ中国」とは決別を急ぐべき

[写真=キム・サンチョル前KOTRA北京・上海館長]


中国のサード報復が、現在、韓国の経済が抱えるもっとも大きな悪材料の一つとなっている。昨年末から始まった報復が今年3月から本格化し、関連業界はほとんどパニック状態になっていると言っても過言ではない。このような状況がいつまで続くのかについての予測がほとんど不可能であるという点も我々を不安にさせる。サード配置と関連した中国側の報復措置は、代替的に韓国に対する不信感と、韓国からの協力がなくても中国経済がうまくいくことができるという自信感から始まっているものとみられる。付け加えると、これを機に韓国の癖を直し、中国を怒らすと大きくに問題をこうむりかねないという確実な前例として作っていくつもりだ。反対に韓国の世論はどうか。北朝鮮の核を阻止してくれるものと信じていた中国が、北朝鮮に何の影響力を見せおらず、サード配置という強手が出たのに、これに対する理解が全くないという不満を言っている。そして、サードが攻撃用ではなく、ミサイル防御用体系と主張している。さらに、経済問題まで絡み、大国らしくない稚拙な振る舞いをするという不満が大きい。

事実、国家間の関係がこのぐらいになると、行くところまで行ったという意味だ。男女間の愛情や友人同士の友情にもバランスが乱れすぎると、関係を持続しにくい。相手についての理解や配慮が崩れると、均衡を回復するのがなかなか容易ではない。サードの配置に対する韓国内の賛成世論が80%にも達しており、戦術核再配備に対する肯定的な世論も70%に近接している。もし、私たちが戦術核まで配置するとすれば、中国が我々と断交を宣言することもありそうな雰囲気さえ感じられる。北朝鮮の核武装が既成事実化されているなか、韓国と日本の戦術核の配備はすでにタイムのテーブルに上がっているものとみられる。状況が急に反転している今、韓国が中国に執着すればするほど、韓国の立場だけが困難になる。出口戦略を迅速に作って少なくとも国内世論だけは結集する必要がある。中国との経済関係も最悪の状況を考慮しなければならない。企業らもこれに準ずるシナリオ・プランニングで対応していく必要がある。我々が中国に大胆になればなるほど、選択できる代案も増える。

多くの韓国企業がサード報復の影響によって死にそうだ。大企業はもちろん、ベールに包まれて苦痛を訴える中小企業も多い。だとして中国市場経営の失敗をサードせいにするのも簡単には賛成しかねる。中国市場の変化と競争構造についてあまりにも安易に対応してきた韓国企業にも応分の責任が明確にある。サードがこれらの失敗をもっと大きく、早いテンポでそそのかしただけだ。現代車の場合は、現地市場に対する過度な楽観とローカルの完成車ブランドの追撃を疎かにした。ロッテマートの場合は、進出初期段階の立地選定から商品ソーシングや管理などスーパー経営に失敗したのがもっと大きな原因だ。アモーレパシフィックもすでに予見された惨事の一つだ。中国はかなり前から「化粧品崛起」を密かに推進してきた。相当な数の韓国企業が中国に巣を作ったが、今は東南アジアなどでリロケイションをしなければならない状況に追い込まれている。一方、サード報復を継続していく中国の内心もそれほど気楽ではない。特定の韓国企業に対する被害が広がっているとはいえ、時間が経つほど中国の企業、あるいは労働者に対する被害も同時に現れているためだ。

◇これからは「見知らぬ中国」との真剣勝負を準備しなければならない

中国から始まっているこのような苦痛を甘受しなければならない。そして、これを克服しては再び立ち直らなないといけない。サード報復をかえってのチャンスにしてこそ、韓国経済の再跳躍が可能である。中国市場に過度に傾いているアウトバウンド市場を多角化していかなければならず、中国の遊客に対する依存度が高いインバウンド市場を改めなければならない。「チャイナドリーム」のような幻想から早く脱却しなければならない。あらゆる中国専門家や礼賛論者らが、こういうときには行方をくらましている。彼らは中国市場が永遠に韓国にとってブルーオーシャンであり、現地に根を埋め込まなければならないという一方的な論理で企業や個人を糊塗した。中国だけを眺めていると、そう錯覚をしがちだ。しかし、世界を広くみて、均衡的にアプローチしてみれば、どれだけ多くの虚像に我々が集中したのかを認めるようになる。誰もが常に自己中心的な考え方をする危機に陥る。1980年代から数十年間、韓国は日本の克服にオールインをした。日本に対する依存度の縮小だけが、わが経済の生きる道というスローガンを掲げた。実際このような戦略、半分以上の十分な成功を収めており、韓国企業が海外市場で一人立ちできるという快挙を持ってきたりもした。相手の日本の立場から見ると、私たちが憎いのも当たり前だが、あえて無視した。

1990年代の初めと半ばにマレーシア駐在時に経験したことだ。聖水(ソンス)大橋や三豊(サンプン)百貨店などが相次いで崩壊され、当時の世界最高層ビル「ペトロナスツインタワー」の片っ方を建てていた韓国建設会社に工事を任せて大変だという記事が現地メディアに特筆大書された。当時、マハティール政府の賢明な対処で危機を免れたが、その後、マレーシアの「Look East」という政策のベンチマーキングのモデルが、韓国から日本に変わったといううわさが広まった。今の中国はこれ以上韓国に対して惜しむものが多くない。私たちが中国に惜しむのがはるかに多い。韓国技術に対する依存度を減らすことができるほど、ローカルメーカ各社が十分に成長している。製造業大国から強国に突き進んでいる今、韓国企業が中国に進出したり、進出した企業が事業を拡張することが、そこまで嬉しくない面もある。一般商品の場合もわざわざ韓国産ではなくても日本産、欧州産などの代替商品が多い。ごく一部領域だけを除いては韓国をほとんど追いかけた自信でサード報復がもっと露骨的かつ長期化される傾向を見せているのだ。私たちがいらいらすればするほど彼らの報復効果が大きくなるしかない構図だ。

このような時こそ、中国よりもより冷静になるべきだ。「見知らぬ中国」を認めて、政府や企業が中国市場進出に対する「新しいもの」を作らなければならない。その上で、中国に対して話すべきのことは話さなければならない。無分別だったり無責任な合弁契約破棄、あるいは原点から再検討などの行為については強力に糾弾しなければならない。不公正貿易行為に対してWTO提訴をしなければならない。その一方、政治と経済が別という側面から韓国財界の適切な対応も必要だ。中・日間の尖閣諸島紛争事態以後、韓国の全経連に該当する日本の経団連が両国の民間レベルの交流拡大に向けた努力が目立ったりもした。全経連のそのような機能や能力が有名無実化しているのは極めて残念な現象だ。多少でも鼓舞的なのは、北朝鮮の核の脅威がますます漸入佳境に突き進み、中国内の識者層や政治の元老らのうち、韓国との過度な葛藤の激化に対して懸念を表示する声も出ている。一部の中国企業は、サードの事態が韓中ビジネスの交通整理や構造調整レベルで新しい転機に作っていこうという動きも見られる。「雨後地實」(雨が降った後、地がさらに強くなる)というように、冷静で落ち着いてこそ、意外に暗雲が早く消え、新しい機会がやってくるはずだ。これ以上ない「見慣れた中国」の代わりに「見知らぬ中国」との一本勝負を着実に準備していかなければならない。
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