[キム・ボンヒョンのコラム] 習近平主席の夢

[写真・筆者=キム・ボンヒョン元駐オーストラリア大韓民国大使館大使]


中国共産党第19回全国代表大会 (党大会)が先月24日に終了した。国内外の多くの分析家たちは、習近平主席が自分の名前を入れた「中国の特色ある社会主義」をすぐに挿入し、毛沢東の地位と同一の仲間に入ったと解釈する。また、10月25日の中央委常務委員7人のうち5人を交代し、3人を自分の側近で採用し、25年間の伝統だった後継者の指名もなかった。習近平主席はこれを通じて中国内で誰も挑戦できない絶対権力を構築した。

習近平主席は今回の党大会で「中国の特色ある社会主義」を統治理念として掲げることで、今後これを中国の国内統治はもとより、対外政策の原則にするものとみられる。また、今回の全国代表大会は2020年に小康社会の建設、2050年には米国を超えるという目標を立てた。

今回の党代表大会で習近平はこのような青写真を示し、中華民族の復興という「中国夢」、つまり中国の夢を中国人民らに提示した。また、これを実現するために自分の権力を極大化するしかないという点を中国人民に説明しようとした。しかし、中国夢を口実に10年間の政権維持を超えて長期政権をしようとすることではないかという疑問を持たせた。

誰でも夢を持つことはできる。米国の人権運動家マーティン・ルーサー・キング牧師は1963年「I have a dream」演説を通じて自分の夢を米国民に提示した。彼が夢見るのは米国第一主義もなく、黒人至上主義でもなかった。彼が夢見るのは人類の普遍的正義を実現しようとすることだった。人間は肌の色と関係なく、全てが同等の尊厳性を持って生まれたため、現世での平等の権利を認められなければならないということだ。

彼の夢は米国で実現され、アメリカンドリームの基礎となった。また、全世界の人権運動の出発点になった。人間の尊厳性という普遍的価値についてはだれもこれを否定する事ができないのだ。これは米国人だけでなく、人間なら誰にも適用される価値であることだ。この夢によって、キング牧師は偉大な指導者として記憶されている。

キング牧師の夢と異なり、普遍的価値に基づいていない夢は危険になる可能性がある。偏狭で分派的な夢を、夢として人類を苦痛に追い込んだ事例も多い。

日本は20世紀初めに急速に発展し、大東亜共栄という夢を見た。日本至上主義を基に、アジア全体を日本の支配下に置くという偏狭で分派的な夢を見たのだ。これは結局、アジア全体を苦痛へと追い込み、日本を滅亡に導いた悪夢になってしまった。

ヒトラーが夢見ることもドイツ民族の優越性に基づいたものだ。ドイツ民族が世界の「master race」(支配民族)にならなければならないと主張したのだ。これも偏狭で分派的な夢であり、結局、ドイツを滅亡に導いた悪夢になった。

習近平が提示した中華民族の大復興という夢が大東亜共栄圏完成の夢、そして、ドイツ民族優越主義とどのような違いがあるのか? 中華民族という分派性を内包しているという点で普遍的価値とは差がある。

中華民族の復興が中国自身には利益になるが、周辺国はもちろん、世界のすべての国家にいかなる利益を与えかねないのかは不明だ。中華民族の復興を掲げながら、2050年に世界最強の軍事力を維持するという夢は米国に脅威的であるだけでなく、韓国と日本にも脅威となり得る。 私たちはサード報復を経験しながら、このような懸念を抱かざるを得なくなった。

米国が世界の指導的な位置にあがったのは米国の物理的な力のためだけではない。米国が自由民主主義と市場経済という普遍的価値を実現し、これを通じて世界の発展に貢献したためだ。 また、米国市場を開放して韓国をはじめとして多くの国が経済発展に助けを受けたからだ。

反面、過去旧ソ連が崩壊するようになったのは共産主義体制の内在的矛盾のためでもあるが、1980年代にソ連を統治したブレジュネプ書記長が体制改革に疎かにしたためだというのが通説だ。ブレジュネプ書記長が共産主義体制を政治、経済的に柔軟な体制に転換させたならば、旧ソ連がそれほどあっけなく崩壊することはなかっただろう。

このような観点からみると、習近平の歴史的課題は中国の政治体制をより柔軟な自由民主主義体制に大転換することであり、習近平主席はこれに向けた夢を見なければならない。中国の民主化は普遍的価値を志向することであり、中国の民主化によって中国の政策がより透明になって周辺国により包容的となり得るからだ。

そして中国の周辺国はもちろん、世界は中国の民主化を通じて共同繁栄を実現することができるという希望を持つようになりうるからだ。中国の民主化を通じて中国が世界に貢献するというメッセージを伝えるこそ国際社会から尊敬を受け、指導力を発揮することができる。

中国は毛沢東により新しい国家体制へと変換(transformation)することに成功し、トウ小平によって市場経済を導入する新たな経済体制に変換するのに成功した。もう、習近平は中国を新しい政治体制に変換しなければならない歴史的使命を持っているといえる。しかし、中国式社会主義と中華民族復興という分派的な夢を提示することで、世界を極度の警戒状態に追い込んでしまった。

第19回中国共産党全国代表大会で提示した習近平の夢が日本の大東亜共栄という夢と何が違うか中国が答えなければならない。
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