[キム・ヨンイクのコラム] 「板門店宣言」の経済的意味

[写真・執筆=キム・ヨンイク西江(ソガン)大学経済学部教授]

南北首脳の完全非核化と平和体制の構築を正式に推進する内容の「板門店(パンムンジョム)宣言」によって経済協力の道も開かれた。南北経済協力は適当な投資先を見つけられなかった韓国企業に活力を吹き込む、北朝鮮の経済成長を促進して統一費用を引き下げてくれるだろう。また、証券市場でもコリア・ディスカウントが徐々に解消される見通しだ。

南北関係の改善はマクロ的な視点から考えると、南北の経済成長に大きく寄与する可能性が高い。1997年の通貨危機後、韓国経済に現れた最も重要な特徴の一つが、総貯蓄率が国内投資率より高くなったということだ。その結果、経常収支が構造的に黒字に転じた。1998~2017年の累積経常収支の黒字が7334億ドルだった。このような経常収支の黒字が金融アカウントを通じて海外直接投資と証券投資の形で国外に流れている。

同期間、海外直接投資が1456億ドルで、経常収支黒字の20%を占めている。微視的 (ミクロな) 側面でも昨年末、韓国企業が持っている現金性資産が575兆ウォン (韓国銀行の資金循環基準) に達するほど投資する資金が多い。

経常収支の黒字で入ってきた資金は海外に出ざるを得ない。また、現金の多い企業は投資先を探さなければならない。南北首脳会談に続き、米朝首脳会談で平和協定が締結され、北朝鮮に対する経済制裁が緩和されれば、この資金の相当な部分が北朝鮮に流れていくはずだ。北朝鮮は世界で文盲率が最も低い国の一つだ。韓国の余裕資金と北朝鮮の低賃金労働力の結合は、質の良い商品を安く生産できるきっかけを作ってくれるだろう。サムスン電子が手先が器用な低賃金労働力を活用してベトナムで携帯電話を大量生産しているが、ベトナムまで遠く行く必要がなくなるということだ。

韓国経済の全体的には経常収支の黒字を処分することができ、企業は新たな投資と利潤を得ることができる場所が北朝鮮だ。これは中長期的に統一費用を大きく下げることができる。2016年、韓国の1人当たりの国民所得は3,212万ウォンで、北朝鮮(146万ウォン)より22倍も多い。韓国企業の投資は北朝鮮の1人当たりの国民所得を大幅に向上させ、統一費用を節減することができる。

南北経済協力はコリア・ディスカウントを解消させてくれるのに最も大きな役割を果たすものになるだろう。最近、株価収益比率(PER=株価/株当たりの純利益)を比較してみると、韓国が9倍程度で、台湾(14倍)、日本(13倍)だけでなく、米国(21倍)に比べてはるかに低い。

韓国の株価が相対的に低評価されているのは主に3つの理由がある。まず、韓国企業の配当性向が非常に低い。昨年、韓国の配当性向は21%で、日本29%、台湾59%を大きく下回った。低い配当性向のために韓国の株価が相対的に上がらなかった。次に、不透明な企業支配構造も韓国の株価を割引させる要因として作用した。それに、地政学的リスクも韓国株価の低評価の原因になった。

このような傾向は次第に改善されている様子だ。第一、企業が配当を増やさなければならない経済環境が展開されている。1997年の通貨危機と2008年グローバル金融危機を経て、国民総所得(GNI)のうち、企業の割合は相対的に増え、家計の割合は減った。例えば、1997年以前にはGNIのうち、個人の割合が71%だったが、2008年以降は62%へと大幅に下がった。同期間、企業の割合は17%から25%に高くなった。この期間、構造調整で企業利益は増えたが、賃金上昇率がそこに及ばなかったためだった。

これによって韓国政府は企業所得の一部を家計所得に移転させるために、企業に「賃金を上げてほしい、雇用を増やしてほしい、配当金をもっと与えてほしい」と要求している。賃金の下方硬直性のために企業は賃金を上げることを躊躇している。昨年末、韓国企業が持っている現金性資産が570兆ウォンを超えるほど投資にも慎重な姿だ。結局、配当を増やすしかない。サムスン電子が今年から3年間、毎年9兆6000億ウォンの配当金を払うことにしたが、そうなったとしても、配当性向は20%前後で依然として低い。

次に、企業の支配構造改善だ。財閥企業のトップらが持っている持分が低いため、一部は配当金よりは系列会社同士で仕事を集中的に発注する形を通じて利益を得た。しかし、今回の政府の経済政策の重要な目標の一つが公正経済であるだけに、支配構造も漸進的に改善されている。配当性向や企業支配構造改善とともに、南北首脳会談以後の地政学的リスクの減少は、韓国株式市場を再評価してくれる契機になるだろう。もちろん、グローバル金融市場が不安になると、その時期は多少遅延されるかもしれない。

北朝鮮の経済開発を支援するには韓国政府が財政負担をしなければならないため、政府の負債が増えて国債発行で金利も上昇する可能性がある。家計は政府が財政拡充のために、より多くの税金を賦課するだろうという予想で消費を減らす可能性が高い。それでも、最終的には南北経済協力の拡大が、南北の経済や金融市場に与える肯定的効果をはるかに大きくさせるものには間違いない。

 
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