[イ・ジョンウのコラム] 家計負債の「過大評価」も困る

[写真・執筆=イ・ジョンウ前IBK投資証券リサーチセンター長]


韓国経済で最も大きな危険要素は断然家計負債だ。規模が大きいだけでなく、過去より増加のスピードも速くなった。

韓国の家計負債の動きは2つの局面に分かれる。第一は2000年から2008年までだ。個人負債と公共負債を含めた総負債が毎年4.3%ずつ増えた。その結果、2000年以後9年間、国内総生産(GDP)対比総負債比率が93%に上昇した。スペインや英国のように不動産価格のバブルが起きた国と同様のレベルだ。カード負債の問題で信用問題に対する警戒心が高かった時、負債の増加傾向はしばらく鈍くなったものの、全体的な傾向は変わらなかった。

第2の局面はもちろん2008年以降だ。状況がさらに深刻だ。米国の金融危機の影響で先進国では家計負債が減っていたが、韓国は増え続けた。特に注目すべき時点は2014年7月以降だ。政府が不動産景気活性化対策を打ち出した結果、お金を借りる規模が以前より大きくなった。その結果、2018年第3四半期の家計負債が史上初めて1千500兆ウォンを超え、GDP比家計負債の比率も96%に上昇した。

規模が適正である場合、負債は咎めなくてもいい。負債増加が消費を誘発し、資産価格を引き上げる肯定的な効果を発揮するからだ。家計負債が多いといっても、この部分が直ちに危機へと繋がるわけではない。負債によって危機が発生するには、規模と増加速度がすべて非正常でなければならない。これに政策的な対応力の弱体化まで加えなければならない。米国の家計負債は2002年から急増し、2005年からはさまざまなところから警告音が鳴り出した。それでも2008年の金融危機まで持ち込むことができたのは政策対応力のおかげだ。

幸い国内家計負債問題がシステム危機に変わる可能性は高くない。負債構造が悪くないからだ。現在、国内負債は信用度の面では高信用者が、所得別では高所得者が融資で大きな部分を占めている。2012年は信用等級1~3等級に該当する高信用度の借主が融資で占める比率が40%に過ぎなかった。今は50%を超えている。反面、信用等級がその以下の人や低信用者の割合は少しずつ下落している。低信用者向けの融資は小額中心であるため、大規模な不良債権が発生する可能性は大きくない。変動金利の適用を受ける融資者が増加し、延滞率が持続的に下落する肯定的な変化も進んでいる。

家計負債が問題を起こすためには、負債を通じて資産価格が上昇した後、バブルが崩壊する過程がなければならない。そうしてこそ担保価値の下落を食い止めるため、金融機関が債権の回収に乗り出し、再び資産価格が落ちる悪循環が現れる。最近10年間、国内資産価格の上昇率は先進国より著しく低かった。危機が発生する必要充分の条件が整っていないという意味になる。

一方、危機に対する認識と対応力は非常に高い。外国為替危機を含めて10年間で危機を3度も経験したからだ。このように危機認識が高い状態では実際に危機が発生することは難しい。2008年に発生した米金融危機が韓国経済に短い衝撃だけを与えたのも、危機に対する認識と対応力が強かったためだ。今はその時より対応力が高く、決して低くはない。

家計負債は危機より景気に及ぼす悪影響がさらに問題になるだろう。家計負債問題が浮き彫りになれば、未来の債務返済力のある家計すら負債を通じた消費を嫌うことになる。多くの負債を抱えている階層は元金返済負担の増加で消費が厳しくなる。投資にも類似の悪影響が現れる。負債が増える場合、元利金の返済負担が増えて投資が減り、長期成長率を低下させることもある。

危機はいくら強調しても度を越さない。家計負債も同様だ。ただ、過度な危機心理がマクロ経済に負担になるのは避けなければならない。通貨危機以降、韓国のマスコミは危機に敏感な反応を見せている。危機を適時に知らせることができなかったという意識のためのようだが、だからといってただ危機を叫ぶと、良かった経済まで悪くなる恐れがある。経済は心理だからだ。
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