[イ・スワンのワールドビジョン] 米中貿易衝突、終わりが見えない

[写真・執筆=イ・スワン論説委員]


米中貿易戦争の「十字砲化」が世界経済を混乱の中に追い込んでいる。1年以上引きずってきた両国間の貿易交渉が大きな進展を見せ、今月9〜10日、ワシントンの高位級会談でとうとう妥結するとの観測が優勢だった。しかし、会談直前ドナルド・トランプ大統領は突然強硬モードに転じ、2000億ドル(約235兆ウォン)規模の中国産輸入品への関税率を引き上げ(10%→25%)する措置を発表する。事態が急反転した理由は、中国が知的財産権保護などの核心条項を法律改正を通じて明文化し、これを合意文に含ませようという米国の要求を中国が最終的に拒否したためだ。交渉決裂以降、習近平主席を先鋒に中国は米国の保護主義と一方主義を連日批判し、「対米抗戦の意志」を燃やしている。今後、米国の強圧に屈服したり 低姿勢に引きずられることはないという中国の決然とした意志をうかがえる。米国と報復の乱打戦も辞さないということだ。

中国は今月13日、600億ドル規模の米国産製品の5〜25%の関税賦課を発表して対抗した。そして、施行日は6月1日に決めた。これは10日付けで発効された米国の中国産製品に対する関税引き上げ措置が実際に適用される時点と妙に一致する。ワシントンの高位級会談が「ノーディール(No Deal)」で終わったが、両国は5月末まで水面下で交渉を続けて最後の劇的な妥協の道を開いておいたのだ。この日、王毅( おう・き)中華人民共和国国務委員兼外交部長は、ロシアのソチで行った記者会見で、「中国はどの国と談判しても国家の主権と人民の利益、民族の尊厳を必ず守る」と強調した。これまで貿易交渉で米国の態度が一定の線を越え、中国には内政干渉のようにみえるという意味でもある。

日本経済新聞の15日の報道によると、ワシントン会談に先立ち、中国の側は150ページに達する両国の草案を105ページの分量で縮小して米国に差し戻した。削除された内容は、中国が構造改革を実行する法的拘束力に関わったもので、中国共産党指導部がこれを「内政干渉を法律で明文化するようにする不平等条約」と見なしたということだ。対外的に公開される合意文に、自国の法律改正の約束まで含むことを、中国は法律主権の申告な侵害として受け止めたのだ。さらに、中国としては中華民主共和国の建国70周年を迎える今年、貿易交渉の妥結が「屈辱的合意」の結果として認識されると、習主席のリーダーシップにも大きな傷を残すこと大きな傷を残すことになるかもしれない。最近、景気刺激策が成功し、米国の圧力に対抗して正面対決を辞さしようという中国内の対米強硬派の立場も強化されている様子だ。

米中交渉決裂と関連して亜洲大学のイ・ワンフィ政治学科教授は、「中国が(米国の)要求した通り法律を修正する場合、第2の南京条約(アヘン戦争が終わった1842年に締結された不平等条約)や第2のプラザ合意(1985年に米国の圧力に日本が円の切り上げを許容)という批判が出てくるだろう」とし、「このような批判はアヘン戦争後、100年間の間「恥辱の時代」の克服を目指す習近平主席の「中国の夢(中国梦)を深刻に毀損するだろう」と述べた。

トランプ大統領は米中交渉が「合意に達したが、彼らが破った」と中国を攻撃した。一方、中国はむしろ、米国が約束を違反したと非難している。エネルギー、農産物など中国が対米貿易黒字を減らすため、米国からの輸入を拡大する品目に対して米国がより多くの購入を要求し、交渉が決裂したという主張だ。慶煕大学China MBAのチョン・ビョンソ客員教授は、最近、亜洲経済に寄稿したコラムで、米中貿易交渉の決裂の根底に敷かれた危機の本質は、大国両国が交渉テーブルで話した話を互いに信頼できない「信頼の危機」と診断した。中国のこれまでの行動を見ると、状況が変われば、いつそんなことがあったかのように言葉を変え、米国が合意事項を法律で明文化し、全世界が見られるように交渉内容公開して不履行時に制裁するということだ。つまり、中国は「なぜ我々を信じないのか」ということであり、米国は「どうやって信じればいいの」ということだ。

チョン教授は「米国覇権の歴史を振り返ってみると、米中の衝突は避けられない。米国は貿易戦争に喧嘩を売り、技術戦争で中国の首を絞めて金融戦争で終わらせる心算だ。現在の米中貿易戦争は米国の覇権国の地位保全のための3段階の戦略の第1段階にすぎない」と主張した。

米国は今後数週間以内に合意が行われなければ、まだ関税を賦課していない3250億ドル規模の中国産製品に対しても25%の関税を賦課すると警告しながら中国を圧迫している。中国との対決で一歩も譲らない米国。16日にはもう一つのカードを取り出した。米国企業が中国最大の通信機器メーカーのファーウェイと系列会社68社との取引を制限する措置を発酵させたものである。これらの企業は、今後、米企業と取引をするためには米国政府の許可を得なければならない。米国は昨年8月、国家安全保障の脅威を理由に公共機関でファーウェイ製品の使用を禁止した。イランとの取引を問題視し、ファーウェイのレン・ジェンフェイ(任正非)会長の娘であるモウ・バンシュウ (孟晩舟)を起訴したのに続き、全方位の圧迫だ。両国間の貿易戦争が拡大レベルを超えて5G通信網など次世代技術の覇権をめぐる長い長い戦いの第1段階であるとみえる。イ・ワンフィ教授は「すでに貿易戦争が覇権競争の前哨戦となってしまったため、今後、両国が以前のような関係を回復することは事実上不可能になった」と評価した。

中国がさらに窮地に追い込まれれば、米国を相手に「非関税の報復カード」である米国債の売却を取り出すという観測が出ている。世界最大の米国債保有国である中国が国債を本格的に「武器化」すれば、世界経済と金融市場は、これまで見られなかった途方もない危機の渦に巻き込まれる恐れがある。6月末には、トランプ大統領と習主席が会う。両首脳が6月28〜29日、日本の大阪で会う主要20カ国(G20)首脳会談前まで二人の顔を立てることができる方法を探るため交渉を続けていくだろうが、誰も大きな期待はしない雰囲気だ。
 

[写真=AP・聯合ニュース]


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