[オム・テユンのコラム] 米中技術覇権競争と韓国経済の選択

  • [執筆=漢陽大学国際大学院のオム・テユン グローバルインテリジェンス学科特任教授]

[写真=Gettyimagesbank]


米国と中国は今年1月15日に第1段階貿易協定を締結し、トランプ政権発足以来持続してきた米中対立を暫定的に縫合した。ところが、新型コロナウイルス感染症(コロナ19)事態に対する中国責任論を巡って米中対立が再び浮き彫りになった。トランプ政権は、中国の香港国家保安法の制定を巡り、香港の特別地位剥奪というカードで対抗しながら中国に対する圧迫の水位を高めている。米国は昨年、同盟国に中国の代表的企業であるファーウェイ(華為)の通信機器を購入しないよう主張したのに続き、中国を除く経済ブロックである「経済繁栄ネットワーク(EPN)」に参加することを期待している。韓国政府は米国と中国の間でどのような立場を取るべきか悩んでいる。

韓国は、在韓米軍のサード配置問題をめぐり、すでに中国から一度経済的報復を受けた辛い経験があり、米中間の激しい争いで一方に偏ることを嫌う慎重な立場だ。最近、米中間の対立問題が貿易不均衡問題だけにとどまらず、コロナ19の責任論、香港国家保安法、台湾問題など全方位に拡散しており、その影響がさらに深刻になっている。特に韓半島の安保問題とも結びついており、多角的な側面から慎重に検討する必要がある。

トランプ大統領は今年11月の大統領選挙を目前に控えている中、コロナ19事態によって米国の経済状況が悪化していることから、大統領選挙の支持率を高めるための一環として中国に対して攻勢的な立場を取っている。しかし、再燃した米中葛藤の本質は技術覇権競争にある。米国は、これまで飛躍的な経済成長を成し遂げた中国の挑戦をこれ以上容認しないという立場だ。中国は改革・開放政策を掲げ、労働集約的な製造業を競争力とし、日本を破ってG2国家となり、第4次産業革命時代における「中国製造2025」という技術屈起とともに「一対一路」を通じて米中間の技術覇権争いに勝利するという本音を現わしている。米国が習近平政権の意志を読み取り、中国の技術屈起を源泉封鎖するという強いメッセージを送っており、中国も反発して米中葛藤が深刻化しているのだ。

フォーチュン誌が毎年、グローバル上位500社の順位をつけているが、昨年初めて中国が企業数において米国を抜いて1位を占める記録を打ち立てた。また、バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイなど数多くの中国IT企業がアップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックなど米国のグローバルIT企業とスマートフォン、情報通信をはじめAI、ロボット、自律走行など未来の核心技術でも市場を先取りするために熾烈な競争を繰り広げている。5G時代をリードしている情報通信装備分野で中国のファーウェイが世界シェア1位を固守しているが、米国は5G時代の先頭走者の座を中国に奪われないため、中国の看板企業であるファーウェイをターゲットに執拗な制裁を加えている。ロイター通信によると、最近米国防総省はファーウェイ、チャイナテレコムなど20社あまりの中国会社が中国人民解放軍と関連があると判断している。今後、米国は先端技術分野の中国企業に対する圧迫水位をさらに高めるだろう。

米中葛藤が長期化するとみられる中で予想される問題点は次の通りだ。

米中間の対立が悪化し、韓国に二者択一を要求する雰囲気が強まるだろう。日本、英国、カナダ、オーストラリアなどは米国側に立ち、中国は米国側に立ったオーストラリアに対して貿易報復を加えた。米中間の対立関係をめぐっては、韓半島の安保的側面とともに経済的な問題が複合的に働いており、「一方の肩を持つ」ような意思決定が容易ではない。

米国と中国が半導体など先端技術開発と関連した自国企業に対する政策的支援を強化しており、今後グローバル企業間の競争がさらに加熱すると予想される。中国が国家レベルで半導体の国産化を通じて半導体への転機に拍車をかけており、今後、中国の半導体企業も脅威的な存在として浮上するとみられる。第4次産業革命時代を主導していく核心部品である半導体で、韓国、中国、米国の間で熾烈な激戦が予想される。

韓国と中国の技術格差が明らかに縮小されており、今後、韓国企業の競争力が懸念される。現在、中国は第4次産業革命時代の核心技術であるAI、自律走行技術などに集中的な投資をしており、技術発展速度がかなり速い。BATで知られる中国のバイドゥ、アリババ、テンセントなどが巨大資本力とプラットフォームビジネスの競争力を土台に東南アジアなど海外へ事業領域をいち早く拡大している。

中国の主力企業は低賃金中心の競争力から脱皮し、第4次産業革命時代の中核技術を先導している。アリババ、テンセントなど中国のIT企業はAI、流通・物流、自律走行自動車、乗車共有など多様な分野でグローバル企業と競争している。政府と韓国企業が安易に対応した場合、第4次産業革命時代の核心技術競争で中国、米国などの競争企業に遅れを取り、韓国経済の未来も明るくない可能性がある。

米中間の技術覇権競争が激しくなっている状況で、果たして政府は何をどうすべきか、その対策案について考えてみよう。

政府はAI、ロボット、自律走行技術など第4次産業革命時代の中核技術とともにスタートアップを戦略的に集中育成しなければならない。韓国のスタートアップがユニコーン企業として成長し、破壊的な革新を主導していけるよう、スタートアップ生態系の造成に積極的に取り組まなければならない。

今年初めに亡くなったクレイトン・クリステンセン元ハーバード大教授が「破壊的イノベーション理論 」で述べたように、第4次産業革命時代には従来の大企業ではなく、デジタル先端技術で武装した新しい企業が破壊的イノベーションを主導し、未来社会の新しいパラダイムを作ることになる。

「ムーアの法則」を技術開発速度に適用してみると、「10 年後の技術力は今より256 倍も向上」し、現在と未来社会の技術力の差は幾何級数的に膨らむことになる。また、コロナ19事態を契機にAI技術を基盤とした非対面産業が急速に発展し、米中グローバルプラットフォーム企業の市場独占現象も深まるだろう。もし第4次産業革命時代に韓国企業が先端技術の主導権を握ることができなければ、G2国家の政治・経済的影響力が今よりも一層大きくなる。

半導体は韓国の対外輸出において貢献度の高い品目だ。ライバル企業に世界半導体市場を奪われないためには、まず韓国企業の骨身を削る努力が必要だ。政府も世界半導体市場で韓国企業が主導権を握ることができるよう、積極的に支援に乗り出さなければならない。

北東アジア地域と韓半島の安保のためには、堅固な韓米同盟関係を維持するのが望ましく、経済的側面では韓米関係はもとより、韓中関係も重要だ。政府は米中対立の中で自由民主主義の価値、資本主義市場経済、国益優先を中心に賢明に対処するのが望ましく、韓国経済の希望的な未来のために何より正しい経済政策を選択することが急がれる。
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