[キム・サンチョルのコラム] 中国、第2の日本になるだろうか?

  • ‐米中貿易戦争が為替戦争に突き進む場合、可能性は排除できない‐

[写真・執筆=キム・サンチョン元KOTRA北京・上海館長]


米中貿易戦争交渉の妥結期限が延びている。3月末から4月末に、再び6月末に見送られている情勢だ。これは何かうまくいかないという反証でもある。当初、交渉が妥結するという見通しもそれほど明るくなかった。ただ、両側の指導者が政治的に大きな傷がつかない範囲内で終わることになるだろうという生半可な予測さえ出ている。どうして妥結がうまくいかないのか?表面的とは違って水面下に下がるほど、両国の立場の違いが顕著に大きいためだ。中国はできるだけこの状況を早く免れたがっている。米国に一定部分を譲歩をしても急いで 決着がつくことを望む。足の爪を隠して忍耐力を発揮すれば結局、時間は中国に有利だという考えだ。反面、米国の場合、今回こそ中国に騙されないと背水の陣を敷いている。毎回、言葉と行動が違う中国に対して、今度こそ絶対に騙されないと意気込んでいる。交渉結果に対する検証なしには仕上げられないという立場だ。お互いの意中を知りながら双方が鋭く駆け引きをしているのだ。

目にとまる部分がある。両者の交渉代表の面々を見ると、この会談がどちらに進むのか見当がつく。実際、両国代表団がワシントンと北京を行き来しながら主導権争いを続けている。特に高官級会談に出席する両者が目を引く。中国側は劉鶴副首相が動くが、米国側はロバート・ライトハイザーUSTR代表とスティーブン・ムニューシン財務長官など二人が交渉団を率いる。米国の底意がうかがえる。中国との貿易交渉が米国が望む方向どおりの結果が出なければ、最後の砦として為替カードを使うことができるというシグナルを投げている。中国に対し、市場開放の拡大と同時に人民元の為替レートに照準を合わせているのだ。為替問題を交渉妥結文の中に盛り込むことで、万が一、中国が合意を履行しなければ、より大きな制裁に移る恐れがあるという脅迫でもある。これは中国が最も憂慮しているシナリオであり、逆に米国の立場から見れば、今回が中国をコントロールできる最後の機会だ。これ以上遅らせると、中国に対する貿易赤字のところか、グローバル秩序維持の求心点がさらに混迷する。

最大の関心事は、米国が中国を第2の日本に追い込むかということだ。日本の失われた20年の始発点は1985年に日本と米国・ドイツ・フランス・英国の財務長官との間で締結されたプラザ合意で始まった。当時、日本の円が2倍程度円高ドル安に進み、貿易収支の黒字が激減して円高の長期不況の泥沼に陥った。不動産と株式市場に重なったバブルに、産業全般にわたる供給過剰、そして本格的な高齢化と重なって、当時世界を号令していた日本経済が一挙に墜落する厳しい試練の出発点となった。最近、中国経済の現象を置いて1980年代の日本と似ているという評価が多い。日本では数年前からこのような論争で熱い。実際、中国経済の3大不安要素として影の金融・不動産バブル・企業の負債などを挙げる。すでに高齢化時代を迎え、中国経済が成熟する前に老いていくという嘲弄まで出ている。中国経済が構造的かつ長期的な低迷の兆しを見せているのも、日本の二の舞を演じかねないという論理に説得力を増している。

通貨戦争という「火の粉」に備えて、われわれも周到綿密なシナリオプランニング準備が必要

中国政府も神経を尖らせ、敏感になり始めた。米中間の貿易交渉がややもすれば「新プラザ合意」に帰結しかねないという懸念が増幅している。中国の政官界あるいは学界で日本の経験から助言を聞くために素早く動いている姿も捉えられる。今すぐは為替戦争へと突っ走るのを食い止めるため、米国に譲歩できる動員可能なあらゆる手段を集めている。商品と知的財産権部門で米国の機嫌を取るものの、最悪のシナリオは免れるために必死になっているのだ。トランプ側は最終談判を控えて「グッドディールでなければノーディール」という脅しで中国側に最大限圧力をかけている。中国側に最大のアキレス腱になる為替相場をえさに大きな譲歩を迫る形だ。中国はいかなる場合にも第2の日本にならないという意志を明確にしている。為替相場に白旗を挙げれば、日本と同様に20年、30年以上の試練に直面することもありえるからだ。最近、日本経済が再建の兆しを見せているが、中国はこれさえも不可能だろうとの予測まで聞こえる。

中国と貿易をめぐってチキンゲームをしている米国の立場も穏やかではない。「トランプの逆説」というか、米国の貿易赤字が10年ぶりに最高値を更新した。中国に対する貿易赤字も2017年3759億ドルから昨年は4192億円へとさらに増えた。米国経済の好況が中国産をはじめ、輸入商品の消費をさらに拡大させた。中国産に対する関税爆弾を控え、一部消費者の買いだめ現象まで現れている。関税政策だけでは貿易赤字を減らすことに限界があることを見せているわけだ。貿易収支の赤字を短期間に挽回し、「アメリカファースト」を固守するためには為替カードを早期に切り出したいという誘惑が十分に現れかねない状況だ。ただ、その影響があまりにも大きいため、方法と時期をめぐって悩んでいるようだ。モラー特検から自由になったトランプ大統領が、成功的に再選入りするためには米中貿易戦争の結果が非常に重要だ。米中貿易戦争が為替戦争に発展する可能性があることを直視し、私たちにもシナリオプランニングが必要だ。


 
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