[キム・ヨンハのコラム] 「ベーシックインカムのユートピア」に関する正直な報告書

양정미 기자

登録 : 2020-07-31 18:12 | 修正 : 2020-07-31 18:33

[[写真・執筆=順天郷(スンチョンヒャン)大学のキム・ヨンハ IT金融経営学科教授]]


ベーシックインカム(基本所得)の必要性と実現可能性をめぐる議論が続いている。韓国の国内では学界を中心に関連研究が数年前から行われていたが、新型コロナウイルス感染症(コロナ19)の緊急災難支援金の支給を前後に社会全般で話題となっている。一部の自治体を中心に特定階層に対する一時的な現金支援制度をベーシックインカムと称してはいるが、普遍的に完全なベーシックインカムは、国家が全国民を対象に一定水準以上の定額の現金を資産所得の調査や寄与など何の条件なく、持続的に支給するものでなければならない。一部で提示されている、国民全体に1人当たり月30万ウォンを毎年支給するベーシックインカムのために必要な約180兆ウォンの財源調達の不可能性を中心に、ベーシックインカムに対する反対の見解があるが、財源調達以前にベーシックインカムに対する思想的背景が異なることに注目する必要がある。

ベーシックインカムの歴史的源流は、トマス・モアのユートピア(1516年)にまでさかのぼる。 ユートピアは、本が出版されてから500年経った2020年にも 私たちが望む世界だ。楽しく平和な気持ちで生きていくことができるユートピアを現代的に実現しようとする制度がベーシックインカムといえる。

トーマス・モアのユートピアで私有財産制に対する不正が前提になっているように、ベーシックインカムの主唱者の思想の根底にも共有資本の概念がある。土地・環境・ビッグデータ等に対する社会的共有を前提とし、これに基づく課税によってベーシックインカム制度の運営に必要な財源を賄うことができると考える。ベーシックインカムが主張される経済社会的背景には、土地価格の高騰により資産の不平等性が極度に両極化し、第4次産業革命の進展に伴いAIロボット等により自動化が進み雇用が失われ、人間の物質主義の貪欲により地球環境が無差別に破壊されたり、地球温暖化に伴う地球の持続可能性が脅かされる未来への懸念が込められている。ベーシックインカムの主唱者は、土地価格の高騰、自動化、経済成長、グローバリズムに対する否定的な立場を持っているため、ベーシックインカムの導入に必要な財源も、そのような人類社会の功績といえるものに対して懲罰的課税を主張している。

1960年代、欧州などの先進国でベーシックインカムについての議論が本格的に提起されたのも、第2次世界大戦後に科学技術の発展により自動化が進み、未来の雇用が懸念された。1968年のローマクラブの報告書からも分かるように、人間の無分別な物質中心の成長主義による環境破壊や資源やエネルギー枯渇の危険で、地球の持続可能性が脅かされる時代的背景と無縁ではない。したがって、現在韓国で進められているベーシックインカム論議は、コロナ19によって提起されている過去60年間の盲目的成な長主義に対する根本的な省察を求めているということで大きな意味がある。

しかし、ベーシックインカム制度の導入の必要性の前提となる経済社会的環境は、そうでもないようだ。第4次産業革命の進展による雇用減少の懸念も、コロナ19による就業者数の減少要因を除けばあまり進んでいない。雇用情報院の2019年の調査によると、プラットフォーム経済従事者数も全体の就業者数の2%を超えておらず、労働所得分配率も2017年の62.0%から2019年には65.5%に再び上昇した。何よりも革命的ではなく平和的な方法でベーシックインカム制度を導入するためには、国民の成熟した共同体意識が必要だ。これまで行ったほとんどの調査研究では、韓国国民の共同体意識が欧州、米国などの経済先進国だけでなく、ミャンマーなどの後発開発途上国と比べても低いという調査結果が出ている。特に、勤労所得税の免除者の割合が38.9%(2018年基準)にもなる現実で、普遍的なベーシックインカム制度を施行できる財源調達は容易ではない状況だ。2018年基準で16.7%に達する貧困人口を先制的に縮小するためには、普遍的な定額のベーシックインカムよりは選別的な補充的所得支援制度が同一の予算条件ではより優越であることが明確だ。特に、コロナ19による経済低迷、財政赤字と国家負債が急増している時期に、既存の社会福祉制度と代替が容易ではないベーシックインカムの導入に必要な財源調達は事実上不可能だ。

トマス・モアのユートピアにも書かれたように、ベーシックインカムの概念は人類の未来社会を構想するときに考えられる理想的な制度の一つだが、現時点で韓国経済・社会問題を解決する代案としては程遠い。長期的な観点を持って実現可能な現実的な代案を模索しなければならない時期だ。
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