[シン・セドンのコラム] アジア通貨危機よりも心配されるコロナ危機

[写真・執筆=淑明女子大学校のシン・セドン名誉教授]

新型コロナウイルス感染症(コロナ19)の感染者が一日600人を超え、「コロナ19」の第3次大流行段階に入った。政府は8日午前0時から3週間、首都圏は社会的距離置き(ソーシャルディスタンス)を第2.5段階へ、非首都圏は2段階にそれぞれ引き上げた。これまで政府は、距離置きの方向をめぐってためらっていた。その理由は政府の傲慢だ。これまで防疫もしっかり行ってきており、経済もよく管理してきただけに、それを崩すことはできないという誤った判断があったのだ。第3次大流行が広がるという事実だけで、これまでの防疫に問題があることが立証された。また、経済成績も全く褒められない状況にもかかわらず、ひたすらOECD1位という成績表だけを前面に出し、どうしようか悩んでいる。効果的な防疫措置として経済萎縮の影響が最も小さく、積極的な所得政策で民間消費の増加が功を奏したとして、政府がOECDのランキングを自慢しているものの、実際に国民はこの50年間で最も厳しい時期を過ごしている。いたるところから、1998年のIMF危機(アジア通貨危機)の時よりも厳しいという声が聞こえている。

2020年の実質経済成長率がOECDの予測どおり-1.1%になるとしても、その数値は過去50年間の中でIMF時よりも悪い状況だ。1998年の名目経済成長率は-0.9%だったが、2020年は0%に近いインフレを考慮すれば、さらに低い。詳細をみると、現在の状況がIMF危機の時よりどれほど悪いかがはっきりと把握できる。1998年度の名目製造業GDP成長率は2.35%であったが、2020年第1~第3四半期の平均は2.5%にすぎない。製造業はIMF危機の時よりも今の方がもっと悪い。サービス業も同じだ。全体サービス業の名目成長率が1998年は1.93%だったが、2020年第1~第3四半期の平均は0.23%で今がもっと悪い。卸小売業の場合、1998年は-6.1%、2020年の第1~第3四半期は-6.75%、運輸業は1998年に7.0%、2020年の第1~第3四半期は-8.8%を記録した。不動産業も1998年は6.3%、2020年の第1~第3四半期は2.95%、教育サービス業は1998年に1.87%、2020年には第1~第3四半期は1.25%、医療・保健・社会福祉サービス業は1998年に8.3%、2020年には第1~第3四半期は4.55%だった。したがって、これらのサービス業種は、IMF危機の時より今の方がずっと悪いということを示しているのだ。もちろん、IMF危機の時より今の方が良い業種もある。建設業(14.64%と2.41%)、金融保険業(1.62%と7.15%)、事業サービス業(-2.98%と2.44%)がそれだ。しかし、サービス業全体から見ると、1998年の1.93%と2020年の第1~第3四半期の平均成長率0.23%を比較すると、今がIMF危機の時よりも悪いのは確かだ。

何より懸念されるのは復元力だ。1998年の経済危機は、1999年と2000年の2年間にわたる10%台の名目成長で、いち早く原状を取り戻した。製造業の成長率も1998年2.4%から1999年に11.0%と13.5%に跳ね上がり、サービス業も1998年1.9%から1999年8.9%と2000年10.1%に回復した。しかし、今はIMF危機の時にあった10%台の成長率を土台にした復元力を全く期待することができない。

第一に、企業がない。IMF危機克服に最も役に立った企業だった。しかし、今は企業の役割が大きく萎縮している。最低賃金が急激に上昇した。2016年には時給が6030ウォン、月給が126万ウォンであったが、2021年に時給8720ウォン、月給が182万ウォンとなった。この5年間で44.6%も上昇した。その上で、週当たり52時間労働制限制度が2018年7月から300人以上の企業に導入され、2021年7月から5人以上の全ての事業場に拡大適用される。また、労組3法(労働組合法、教員労組法、公務員労組法)が2020年6月に国会で可決され、解雇者や失業者の労組活動が認められたため、事業場の大きな混乱が予想されている。人件費高騰リスクと悪化した労使環境の条件で、多くの企業が海外に流出している。輸出入銀行の統計によると、2016年の海外直接投資金額は398億ドルだったが、2019年には618億ドルに急増し、3年間で55.3%も増加した。

第二に、過度な政府支出と国民の税負担だ。政府の支出増加速度は税収増加速度よりずっと速い。2016年の政府総支出は385兆ウォンだったが、2019年には485兆ウォンと3年間で26%も増加した。政府の支出増加を支えるため、国債発行は2016年末の517兆ウォンから2020年10月現在、721兆ウォンへと37.8%も増えた。国税収入も2016年242兆ウォンから2019年には293兆へと21%も増加した。

第三に、国家と国民の財政能力が大きく損なわれた。最も狭い意味での国家負債(D1)の場合、2001年は113兆ウォンだったが、2020年9月は800兆ウォンへと、7倍以上急増した。家計負債も2002年の465兆ウォンから2020年の第3四半期には1632兆ウォンへ3.5倍増えた。毎年100兆ウォン以上の財政赤字が累積して国家負債はさらに増加するだろう。財政を通じた国の景気刺激能力は著しく低下し、個人は過度な利子負担で消費余力は消えるだろう。

第四に、輸出の見込みがない。IMF危機克服には輸出が大きく役立った。1999年から2000年までの2年間の輸出増加率はそれぞれ8.6%、19.9%だった。1998年の1323億ドルの輸出から2000年には1723億ドルと400億ドル(30%)も増加した。その結果、貿易収支も2年間で650億ドルも蓄積でき、実質経済成長率も1998年の-5.1%から1999年には11.5%へと、2000年には9.1%に上昇できた。しかし、今はそうではない。2019年の輸出は10.4%減少し、2020年11月現在も7.1%減少している。米中貿易紛争や保護貿易主義、コロナパンデミックによる世界経済の低迷を考慮すれば、今後の見通しもそれほど明るくない。

政府は誤った判断を捨て、2つのうち1つを選択する重大な決断を下さなければならない。一時的な経済ショックを減少し、第2.5段階の防疫を超える徹底的な閉鎖措置を取るか、そうでなければ現在の水準の防疫を続けるものの、果敢な緊急財政・経済支援を展開しなければならない。防疫段階も引き上げず、経済支援も拡充しなければ、結局、その被害は全てIMF危機時よりも深刻な庶民や中間層の経済没落へと帰結することになるだろう。
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