[ムン・ヒョンナムのコラム]アルゴリズムの順機能と逆機能

[写真・執筆=淑明女子大学経営専門大学院のムン・ヒョンナム教授]

なかなか物事を決められない人には、アルゴリズムが解決してくれるのがとても助かる。何を選択すれば良いかを悩む人に、一人一人の好みに合わせた選択肢を提示するからだ。しかし、アルゴリズムは人間が作ったものなのに、人間が自分も知らないうちにアルゴリズムの奴隷になっていくのではないかと心配になる。

私たちがよく使っているグーグルやネイバーなどのポータル、ユーチューブやインスタグラムなどのSNS、アマゾンとクーパンなどのショッピングモール、またはショッピングアプリ、ネットフリックスなどがアルゴリズムによって運営されている。ユーチューブは有害・偽情報がユーチューブ上に拡散するのを防ぐため、ユーチューブのアルゴリズムを1年に30回以上改編したという。これにより米国ではユーチューブの政策違反の可能性が高いコンテンツの消費が70%以上減少したという。

アルゴリズム(algorithm)という言葉の語源は、長い歴史を持っている。アルゴリズムはアラブ(ペルシャ)の数学者であるアル・フワーリズミー(al-Khwarizmi・780 年~850 年)の名前に由来する。フワーリズミー氏はインド・アラビアの数字と演算を西洋に紹介し、『代数学の父』と呼ばれたりもする。代数学を意味する英単語アルジブラ(Algebra)は、彼の著書『アル・ジャブル・ワル・ムカーバラ(al-jabrwa al-muqabala)』から由来する。

アルゴリズムは数学、コンピュータ科学、言語学、生命工学、天文学など様々な分野における何らかの問題を解決するための手順や方法の組み合わせであり、それを公式化した形で表現したものである。アルゴリズムで最も重要なのは正確性(correctness)と効率性(efficiency)であるといえる。同一の問題を解く上で、複数のアルゴリズムが結果は同じでも、解決方法によって実行速度や誤差・エラー等に差があり得るからだ。IT分野でアルゴリズムという用語は、検索アルゴリズム、推薦アルゴリズムなどのように業務分野別に使用されることもあれば、グーグルアルゴリズム、ネイバーアルゴリズム、ネットフリックスアルゴリズム、ユーチューブアルゴリズム、インスタアルゴリズムなどのように、特定の業者のアルゴリズムを表す用語としても使われる。

コーディング、プログラミング、アルゴリズムが同じまたは同じような意味で混用されることも多いが、その違いを簡単に指摘したい。コーディング(coding)はコード(code)を作成する(ing)という意味だが、コンピューターが理解できる言語でコンピューターに命令することをいう。プログラミング(programming)はプログラム(program)を作る(ing)という意味であるが、コーディングと同じ概念で使用する場合もあるが、若干異なる意味を持つ。単純コーディングだけのコーダにならず、プログラマになれという言葉がある。コーダは単純に与えられたコーディングだけを行うものであり、プログラマはそれなりにアルゴリズムを組んでプログラミングを行うものと考えられる。プログラマの中にはアルゴリズムを考えずにコーダのように単純にプログラムを組む人も少なくない。

最近は小・中等教育でコーディングに対する関心が高まっている。教育課程の改正により2018年から中学生に対するコーディング教育の義務化が施行されており、2019年からは小学校5、6年生からコーディング教育を義務化している。他の国々は韓国よりコーディング教育が進んでいる。英国は2014年からすべての公教育課程にコーディングが含まれており、フィンランドは2016年に小学校1年生からコーディング教育を行っている。中国とインドも、韓国より先に教育当局と父兄がコーディング教育に大きな関心を示している。アルゴリズムに対する教育は、初等中等教育を経てから高等教育でプログラミング教育をするときにするものではない。小学校の時からアルゴリズムに対する教育をするこそ、問題解決能力に創意力を加えることができ、一層効果的な教育ができる。

様々なアルゴリズムが、私たちがよく認識していない間に私たちの生活の中に浸透している。アルゴリズムが個人の好みに合わせた適合型で推薦してくれるため楽でもある。しかしアルゴリズムの副作用も少なくない。ユーチューブなどSNSが進めるコンテンツがユーザーの好みに合わせる利便性はあるが、ユーザーの好みを一方に集め、確証偏向(先入観を裏付ける根拠だけを受け入れ、自分に有利な情報だけを選択的に収集することである。自分が見たいことだけを見て、信じたいことだけを信じる現象だが、情報の客観性とは関係ない)に陥れる。価値判断の客観性を確保するには、たまにでもアルゴリズムの支配から抜け出す努力が必要だ。そうでなければアルゴリズムの奴隷となりうる。

私たちは巨大なアルゴリズムの世界に住んでいる。Eコマースやモバイルショッピングをしていると、知らず知らずのうちにアルゴリズムが推薦する商品を買うようになる場合が少なくない。最も高度化したアルゴリズムはこのEコマースにある。全世界のオンライン販売の40%を占めるアマゾンのおすすめアルゴリズムA9は、膨大なデータを通じてアマゾンに莫大な利益をもたらした。全世界に8000万人のユーザを有するネットフリックスの全コンテンツ視聴のうち75%がアルゴリズムの推薦によって行われる。世界中の情報倉庫となったユーチューブやインスタグラムなどのSNSもアルゴリズムを活用して勢力を拡大している。

アルゴリズムがユーザにとって便利さは与えるものの、公正性の是非が生じる場合も少なくない。エアビーアンドビー(Airbnb)は、アルゴリズムの公正性を巡る議論でトラブルが起きたりもした。同じ地域に似た条件の居住地であるにもかかわらず、白人ホストの宿泊費が黒人より12%高く策定されたのだ。米国の非営利オンラインメディアであるプロパブリカ(ProPublica)は報道を通じて、米国の多数の州裁判所で使用するアルゴリズム・コンパスが、判決時、有色人種を差別しているという事実を告発した。過去、ネイバーのニュースは、大韓民国国民の絶対多数の71.4%が利用する巨大メディアだった。ところが、ニュース編集アルゴリズムの問題が指摘され、ネイバーは2019年4月にニュース編集を終了した。

アルゴリズムの限界はエラーだけではない。商業用アルゴリズムは基本的にユーザ受入れを目指す。拒否というリスクを減らすことで、引き続き問題点が生じることになる。また、ユーザは意識しないうちに、アルゴリズムによって深刻なデジタル偏食や情報偏向性に陥りかねない。だから意識しないうちにアルゴリズムの奴隷になり得る。そのため、意識的にアルゴリズムに引きずられるのではなく、人間が主導的に意思決定を行い、客観性を確保しようとする努力が必要である。
<亜洲日報の記事等を無断で複製、公衆送信 、翻案、配布することは禁じられています。>
기사 이미지 확대 보기
경북 포항시 경북 포항시
닫기