[ソ・ジンギョのコラム] サービス貿易時代、包括的国家通商戦略を立てよう

[写真・執筆=対外経済政策研究院のソ・ジンギョ先任研究委員]


通商が商品貿易を中心に関税削減を追求した時代はすでに過ぎた。今日の通商は、商品よりもサービスに係る国内規制や知財権保護など無形の価値確保により大きな重点を置いている。さらに最近では労働と環境はもちろん、ジェンダー、安保まで通商で扱っている。今後、通商が国家レベルの総合的視点から統合と調整が必要な理由は、このように通商の領域が拡大し、次第に多様化・専門化・複雑化しているからだ。

まず、世界貿易の中心はもはや商品ではなく無形のサービスである。技術発展とデジタル社会への転換が早まり、サービス貿易の成長速度は商品貿易を超えて久しい。付加価値基準で見たサービス貿易額は2017年に13兆4000億ドルを記録し、付加価値として見た商品貿易額13兆ドルを超えた。特に、通信やITサービス、知財圏などは増加傾向が目立ち、商品貿易の増加速度より2倍以上速い。このような状況だから、サービスが発達した先進国は農業のように国内政治的に敏感な場合を除いて商品関税の引き下げには別に関心がない。商品関税は、自由貿易協定(FTA)を通じ、すでに引き下げられたためだ。世界銀行の資料を見ても、世界商品関税の平均は2017年にすでに2.6%水準だ。WTO多国間貿易交渉で進展が見られない理由も、グローバル大企業がサービスや知財権、デジタル貿易に関心がある一方、商品中心の関税引き下げを追求する多国間交渉には関心がないためでもある。

一方、サービスや知財権、技術なども今後の雇用創出や成長の中核でもある。若者が望む高級職は大半がサービスだ。教授や先生は教育サービス、銀行・証券・保険は金融サービス、放送とテレビ・映画も大きくは文化サービスに属する。判事・検事や弁護士は法律サービスであり、医師や病院は医療サービスである。また、核心先端技術と知財権が一国を救ったりもする。このようなサービスは、たいてい参入障壁が高く、その分競争が制限されている。公共の利益のために適切な水準の国内規制が必要であるが、なにより質の高いサービス供給のために適切な水準の開放が必要な分野でもある。デジタル貿易もデータの自由な移動と活用という側面と個人情報の保護という側面から適切なバランスと調和が求められる。いずれも利害が衝突する関係だ。このように、今後の通商は商品と技術、サービス全体を網羅し、国家発展の次元で利害衝突をバランスよく調和させる「包括的統合の通商」にならなければならないということだ。

最近の通常が商品やサービスを超えて労働や環境、ジェンダー問題を扱っている点も注目すべきだ。WTOでは、既に2001年より持続可能な発展という観点から環境と貿易に取り組んできた 環境保全のためにやむを得ず貿易を制限する場合、これをどの程度まで許容しなければならないかが核心争点だ。最近EUが公表した炭素国境調整税も気候変動に対応するためのEUの一方的な貿易措置という点でWTOで議論されてきた環境と貿易議題と本質的に変わらない。環境保全と気候変動対策のために国内産業が炭素排出量を減らさなければならないなら、果たしてどれほど削減できるかについての国内の状況把握が先行してこそ、国際交渉に臨むことができることは明らかだ。産業と環境専門家の協力を土台に通商専門家が国際交渉で国益を確保しなければならない典型的な協業構造だ。

労働問題も同じだ。単にバイデン政府の労働者中心の貿易政策でなくても、労働が通常の領域に入って久しい。劣悪な労働環境や未成年労働による労働搾取は、すでに人権レベルで世界的に禁止されている。このため、国際労働協約や韓国の労働現実を考慮せずに国際通商交渉に乗り出すのは話にならない。韓・EU FTA労働チャプターを根拠にEUがわれわれに提起した労働関連紛争解決は、これまでわれわれの通商がどれだけ労働問題に無関心だったかを端的に示している。今後の労働問題は、労働者の人権と事業場の環境を中心に、引き続き浮き彫りになるしかない。これにジェンダー問題まで加わり、女性労働問題と男女性差別問題まで通常で扱うことになる。ジェンダー問題専門家はもちろん、労働専門家の協力と支援を土台に韓国の労使現実とジェンダー問題の実情を反映した交渉戦略が立てられてこそ、通商専門家が国際交渉でこれを貫徹させることができる。

最後に、今後の通商は対外交渉だけでなく、国内の関連利害関係者に対する対内交渉も欠かせない。国内利害関係者の要求水準と葛藤解消案に対する悩みなしに、一方的に交渉結果を押し通すことはできない。特に利害関係が衝突する場合、政治的にこれを回避しようとするため、これを調整することも韓国では通商の問題につながる。国内の補完対策と被害補償及び支援は、政府の財政が欠かせない。省庁間や様々な分野における専門家の協力が不可欠となっている。これに米・中覇権競争まで加勢し、安保イシューまで追加されれば、通商はそれこそ国家政策決定の最高機構で扱うほかない事案になる。

このような今後、通商の広範性と専門性・複雑性を踏まえると、もはや通常は単なる商品関税引き下げであっても産業保護にとどまることはできない。多様化し、専門的なサービスはもちろん、これを規制する国内規制と国際基準の調和、韓国の環境及び労働環境、安保面での考慮などを総合的に評価し、国家戦略レベルで統合・調整されるべきである。通商関連の国内組織はもちろん、海外組織の有機的な連携強化は言うまでもない。今後、通商が包括的総合通商にならざるを得ない理由だ。
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