[キム・サンチョルのコラム] 韓国経済、「コンティンジェンシープラン」が必要だ

[ 写真・執筆=キム・サンチョル東ソウル大学教授(前KOTRA北京・上海館長)]


グローバル経済が再び動揺し、ポストコロナを準備している経済主体たちを戸惑わせる。ショックの大きさが国や企業、個人に異なっているのがジレンマだ。コロナパンデミックが本格化した昨年の世界経済は「R(Recession)の恐怖」に苦しんだ。シャットダウンにより工場の稼動が止まり、グローバル供給網が麻痺して交易量が激減した。今年初めからはワクチン接種が始まり、基底効果が反映されたものでもあるが、回復傾向に反転した。先進国を中心に日常への復帰が具体化し、消費が増加してグローバル貿易も再び活気を帯び始めた。むしろ「I(Inflation)の恐怖」を憂慮するほどだった。将来の不確実性に対する憂慮が、ますます現実になっているのだ。

第2四半期も持ちこたえられず、世界経済は再び「S(Stagflation、スタグフレーション・低成長・高物価)の恐怖」に包まれている。コロナ変異株の拡散による生産支障に物流大乱まで重なり、グローバル供給網のボトルネック現象が増加している。原油価格など原材料価格は天井知らずに跳ね上がる。景気は冷え込んでいるのに、物価上昇要因はさらに増える。弱り目に祟り目で世界の工場である中国は、電力難により製造業景気の減速が目立っている。第2不動産大手の恒大集団(Evergreen Group)ショックを受け、中国経済の隠れた雷管である企業負債が水面上に浮上している証拠だ。この30年間、危機を巧みに免れてきた中国経済のハードランディングの影が見え隠れしている。米連邦準備理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の縮小)を年内に実施するという予告から、米国債金利が上昇している。

このような悪材料の同時多発的出現で、各国経済に暗雲がドミノのように広がっている。特にグローバル金融市場が乱高下しており、株式市場は連鎖的に急落し、急激なウォン安ドル高が進む。原因を提供している震源地よりも経済ファンドメンタルズが脆弱な相対的弱者である新興国であるほど、致命的な直撃を受けている。海外依存度の高い韓国もリスクにさらされており、米国や中国よりも大きな影響を受けている。問題は、現在のような状況がいつまで持続するかと、無防備にやられているかに焦点が集まる。注目すべきことは、コロナ禍以降の景気回復の過程で、国ごとに異なる格差が生じていることだ。これは企業や個人にも共通に適用される。ここで落ちこぼれたら回復できないかもしれない.

経済界ではすでに「パーフェクト・ストーム(総合的な危機)」に備えなければならないという警戒感が拡散している雰囲気だ。対外環境が悪化してコロナの状況がなかなか好転せず、内需もほとんど焦土化した状態であるため、対内環境も最悪だ。内外の悪材料が重なり、危機は一層に大きくなっている。大統領選挙を控えて経済論理よりも政治論理が先行し、ポピュリズムが猛威を振るっている。企業に有利な環境より、不利な規制が増えているのも問題だ。危機状況に備える「コンティンジェンシープラン」が切実だが、政権末期にまともに稼動できるかは疑問だ。コインの両面のように危機の裏側には必ず機会も存在する。危機は最小化し、機会は極大化する戦略的アプローチが急がれるのが現実だ。

「ウィズコロナ」に対応する全般的な経済政策の修正で企業の負担を軽減すべき

まず、韓国経済の柱であり支えだった輸出が萎縮してはならない。グローバルサプライチェーンがきちんと働かず、原材料価格が値上がりすれば全般的な輸出環境は悪化するものの、輸出プレイヤーらに及ぼす影響は異なる。むしろ機会要因もある。ライバル国の中国製造業の供給能力に支障が生じれば、グローバル市場で韓国商品の立場は改善される。原油価格の上昇は石油化学製品の輸出が増え、中東の消費や建設需要の回復は韓国にとっては好材料となる。輸出競争力を確保するためには、適正な為替レートが堅持されなければならない。輸出と輸入とのバランス的な観点からみると、急激なウォン安ドル高よりは一定水準の下落を誘導することが求められる。海外市場を全面的に再点検し、優先順位やポートフォリオを再設定する戦術が必要だ。

来月施行される予定の「ウィズ(With)コロナ」に対するより精巧な対応策を打ち出さなければならない。単純に社会的距離の確保を緩和する「ワクチンパス」にとどまらず、ポストコロナ経済環境に備える全般的な政策修正が避けられない。内需回復に劣らず海外市場の先取りに対する具体的な絵を描かなければならない。必死になって競争する企業の負担と苦痛を減らすことに方向を合わせるべきである。急速にウィズコロナへ転換するグローバル経済で最大の利益を確保してこそ、韓国経済の持続可能性が保障される。最も重要なことは、韓国企業が軽く動けるように少なくとも1~2年程度は負担を軽くすることだ。重大災害処罰法や温室効果ガス削減目標などを柔軟に調整しなければならない。さらに財政・金融政策など出口戦略のタイミングにも慎重になる必要がある。

コロナ影響による世界経済の変数を読み取らなければならない。W字型の回復傾向が続いている推移を考慮すると、年末に景気が逆転する可能性が高い。この過程で韓国企業が最大の利益を確保してこそ、韓国経済の持続性が可能になる。グローバルバリューチェーンの再編に先に参加し、米国やグローバル企業との合従連衡を急がなければならない。また、中国市場への依存度を減らすため、市場多角化を積極的に模索すべき時期でもある。何度も世界的な経済危機を経験した韓国企業は意外と危機に強い。生き残る方法をよく知っている。大半の経済主体は、韓国経済の敵が海外よりも国内に多いと不満の声をあげている。韓国経済に 灰色のサイ(放置していずれ危機を招くこと)がうようよしているという警告を肝に銘じなければならない。
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